Tグループとナラティヴ・アプローチ No.001:ナラティヴ・セラピー&Kouさんと出会う

 2020年10月19日(月)、第16回TグループWithナラティヴ・アプローチを開催し終えた今、初めて国重浩一(Kou) さんにお会いしたことを記しておきたい気持ちになりました。

 2018年12月16日(日)13:00〜17:00にイグナチオ教会でマザーハウス主催「犯罪からの回復とグループセラピー:ナラティヴ・セラピー〜書籍からでは学べない会話の紡ぎ方〜」で国重浩一さん(Kouさん)と初めてお会いすることができました。

 セラピーというイメージ・訳は治療であり、ナラティヴを用いて精神的な苦しみをもっている人を治療する方法の1つであるという程度の理解でした。
 会場に着いて、Kouさんと初めてにもかかわらず、ソフトなトーンで親しく声をかけていただいたことが印象的でした。それとともに、そばにKouさんに引き合わせてくれようとした園木さんがいてくれたことが、人見知り(?)の私には安心させてくれました。

 WSは、五十嵐理事長さんからの挨拶があり、ご自身が元受刑者であり、マザーハウスは元受刑者・出所者等を支援するために設立されたNPOであり、犯罪からの回復と支援をしているとのご挨拶から始まりました。

 続いて、Kouさんが登場して、この場所は特別な場所であることのお話と、ナラティヴ・セラピーでは、社会で生きていて、「聞かれない声がある」こと、例えば、元受刑者、女性の声、過去に失敗した人、悩みがある人の声を聴くことを強調されていたように記憶しています。

 今日は、受刑者の方にKouさんがインタビューすること、それは①ナラティヴ・セラピーの姿勢で一人の方の人生をお聞きすること、その後で②「リフレクティング」で、元受刑者の方々がどのようなところで気持ちに触れたのか?感情が喚起したのか?③私たちのインタビューをフロアのみなさんがどのように聞いたのか?話し合っていただきますといった、WSの概略を話されてプログラムは展開していきました。

 こうした方々と共に過ごし、聞かれない、語れていない声を聴くことが、ナラティヴ・セラピーの真髄にあることが、私がナラティヴ・セラピーに強い関心をもつ要因になりました。

 学ぶ中で社会(人々がどのように生きているか)に対する問題意識が強くあること、それは、K.レヴィンが自らユダヤ人であり、ナチスの独裁的圧政に対する民主的風土づくりであったり、一人ひとりの声をどのように出してチームやコミュニティを創ろうとする研究とつながるように感じたのです。

 今、私は、ナラティヴ・セラピーとは「周縁化された人々がイキイキ生きることができるように支援すること」と言ってもいいのではないかと考えています。

 グループダイナミックスを生かしたラボラトリー体験学習とりわけTグループ(Tとはトレーニング)の学びの中心的なテーマも一人ひとりを尊重したつながりをもった生き方を探求することであると言えるだろうと思っています。その学びが、日常のグループや組織、コミュニティなどに生かしていく人材(Change Agent)を育成していると考えています。

 ナラティヴ・セラピーとラボラトリー体験学習の哲学的ベースも学びのアプローチも親和性が高いのではないかと考えています。

 少しずつ、JIELで2019年よりスタートした「Tグループ with ナラティヴ・アプローチ」の実践の報告もしていきたいと考えています。(つづく)