Tグループとは No.024 学習者一人ひとりに学びのスタイル(好み)がある

 ラボラトリー体験学習の学びのサイクルは、サイクル(循環)として扱うことはとても大事なのですが、<体験>⇒<意識化>⇒<分析>⇒<仮説化>⇒<新しい取り組み:体験>に順序にこだわりすぎるのも学び方を窮屈にしてしまう可能性があります。

 NTLが主催されるTグループをはじめとするラボラトリー体験学習を用いた研修で使用されるテキスト「Reading Book for Human Relations Training」では、体験学習の循環過程の説明に入る前に、それぞれのステップの特徴が語られています。

 グループの中で自分から話をしたり、新しい試みをすることを通して学びを増やそうとする人がいたり、一方ではTグループの中でじっと黙って他のメンバーがやりとりしている様子をよく見て、どのようにすれば人と人とのコミュニケーションがうまくいくかを学ぼうとする人もいます。ある人は直接他者と関わるというよりは、小講義を聞いたりテキストを読んだりして、コミュニケーションとは何か、何が大切かを考える人もいますし、またある人はこうしたら相手の話を丁寧に聞くことができるのか、こんなふうに自分は話してみようかと自分の課題を考えることを好む人もいるのです。

 No.23で話しましたKolbの「体感による理解(Grasping via Apprehension)」対「認識による理解(Grasping via Comprehension)」の次元と、「内面化による変容(Transformation via intention)」対「拡張による変容(Transformation via Extension)」の次元を思い出していただくと良いでしょう。

 ある人は、体験することを好み、「やって学ぶ」「やれたことが学び」として、まさに体験から学ぶこと(体感すること)を喜びにしている人たちです。「体感による理解(Grasping via Apprehension)」を大切にして学ぼうとされる方です。こうした学びの好みは、ラボラトリー体験学習の場の中に身を置き、学ぼうとするときに、とても大切な学びの志向性です。体験することに向かうエネルギーが高く、グループの中で体験することにドライブを強くかけていただけます。

 その極の反対を志向する方は、理論やモデルを理解し、それらのことと目の前の出来事を重ねながら認識することを好むタイプです。「認識による理解(Grasping via Comprehension)」を大切にして、概念的に現象を捉えること(納得すること)を積極的に求められます。ふりかえりの時に、それぞれの出来事を思い出し、メンバーが語っている時に、それらの意味づけを抽象度の高い言葉を駆使して整理してくれるなどが行われ、体験したことに対してメンバーに納得感(学び)を与えてもらえます。

 一方、グループの中での相互作用をじっくり眺めて、その中に起こっていること(プロセス)を丁寧に拾い出すことによって学びを深めようとするメンバーもいます。「内面化による変容(Transformation via intention)」を好む人は、自分の内側の世界も含め、他者の様子、グループの様子を観察することに興味をもち、気づきを拾い出すことを通して、自分や他者、グループの理解を深め、その気づきを学びとして大切にします。この学びのスタイルを好む方がメンバーにいると、グループの中でのプロセスの出来事をいろいろな角度から時間をかけてプロセス・データを拾い出すことができます。

 逆に、いろいろと眺めたり、考えたりすることよりも、自分をどのように生かすか、適応させていくか、そのために何が私の課題か、このグループの成長・変化のための課題は何かをいろいろと試行錯誤したいと考えるメンバーもいます。Kolbの述べる「拡張による変容(Transformation via Extension)」を好むタイプと言えるでしょう。この学びのスタイルを好むメンバーがいると、個人やグループが今の状態でとどまることなく、次のステージに向かうためのアイデアを出してくれたり、実際に動き出すための力になってくれるのです。

 グループで学んだり、チームで活動することの良さや面白さは、こうしたメンバーの学びのスタイルの違いがあるからだとつんつんは考えています。それぞれのもっている学び方をいかに自由に発揮し合えるようになるグループやチームになるかが、リーダーやファシリテーターにとっては大事な支援の視点になるのです。

 Kolbらは、「Organizational Psychology – An Experiential Approach to Organizational Behavior [FourthEdition](1984)」の書籍の中の「学習と問題解決(Learning and Problem Solving) 」という章の中で、学びの好み(スタイル)を診断するための簡単なインベントリーを紹介してくれています。関心がある方は、南山短期大学人間関係研究センター紀要「人間関係」第15巻、P.173〜193.に拙訳を掲載させていただいています。

 学びのスタイルの話は、どれが高い方がよいとか、どれが低いからダメだと言うことではなく、グループのメンバーはそれぞれの生活の中で学びへの好みを育ててきているということだと思います。Tグループを中心としてラボラトリー体験学習においては、<体験>から体験学習を生かすだけでなく、どのステップからでも体験学習は生かせるという考え方があります。

 理論好きなメンバーの方は大いに抽象的な概念化をしながら、私の課題はなにか?グループが取り組むとよいと思われる課題はなにか?を考え、それをトライアルしていくことで学びの循環は回り始めます<分析>⇒<仮説化>。仮説を立てることが好きな方は、自分が考えた仮説を実際の行動として反応して動くことが学びに繋がるでしょう<仮説化>⇒<体験>。気づくことをたくさん拾い出すことを好む人は、それらのデータを抽象度を上げて概念化するとしたら、どのような傾向があったり、どのようなパターンが見えてくるのかなどを吟味することができる学び、次のステップに移行したことになります<意識化>⇒<分析>。

 ラボラトリー体験学習の場を創るファシリテーターは、こうした参加者の学びの好みの理解とその好みを生かした次の一歩を支援することで、体験からの学びがさらに豊かになるとつんつんは考えています。とりわけ、Tグループにおける相互作用の中には、さまざまな学びの要素がちりばめられたくさんあります。それらをどのように拾い出し、学びとして結晶化させることで、自分を、メンバーを、グループを育てていくことができる宝の山とも言えるでしょう。

 NTLの書籍の中のある章の最後には、「ラボラトリーは、学ぶ機会を 提供するまさにビュッフェ料理です。ご自由にお試しを!(もし舌に合わない“料理”があったとしても、心配御無用)。」なんて表現もあります。(つづく)