ラボラトリー体験学習を知る

体験学習の応用について

ベーシックエンカウンターグループとの違いは?

qラボラトリー方式の体験学習とエンカウンターグループとは何が違うのでしょうか?

 

a ラボラトリー方式の体験学習とエンカウンターグループ、もしくは構成的グループエンカウンターとの違いは何かについて、しばしば質問されます。その違いを知るには、やはりそれぞれのグループの誕生の違いをお話しするのがいいでしょう。

ラボラトリー方式の体験学習は、1946年米国コネティカット州で、雇用機会均等法の遵守のためのリーダー養成から始まったとされています。社会心理学のグループダイナミックス研究の創始であるレビン(Lewin,K.)らが州の教育局より依頼を受けて、彼らは、ソーシャルワーカーや教育関係者、企業人を集め、講義やロールプレイングやグループ討議を用いたプログラムによるワークショップを行いました。ベネ(1964)によると、グループ討議の時の参加者のやりとりの様子を報告し話し合っているスタッフミーティングに参加したいという参加者からの申し出があり、レビンはそれを了承したのです。そして、そのミーティングでは、スタッフ(研究者や観察者)と参加者と一緒になってグループ・プロセス(グループの中で起こっていること)を話し合ったみたいです。結果、ずいぶん相互に認識のズレがあることが分かり、参加者とスタッフがその時その場で感じていたことや心の動きなどのデータを率直に出し合っていくことによって、真実のグループ・プロセスが明確になり、自分・他者やグループの理解を深めていくことができたのです。これは、とても衝撃的な発見でした。その後、米国におけるNTL(National Training Laboratories)が1947年からメイン州ベセルで開催する「Tグループ(Human Relations Laboratory)」へ発展し、社会的感受性とコミュニケーションスキルの開発やリーダーシップの理解と実践のためのトレーニング、組織開発(Organization Development)などへの応用として教育プログラムは展開されていったのです。そこには、偏見の問題を取り上げながら(コンテント)、グループの関係の中に偏見をもった見方が存在しているかどうか(プロセス)といった視点をもつこと、すなわち “コンテントとプロセス”の認識、とりわけプロセスに気づき学ぶことが特徴的なものとしてあります。また、体験から学ぶためのステップとして、社会科学方法論を適応した”学習の循環過程”が取り上げられているのも、重要な特徴です。

一方、エンカウンターグループは、ほぼ同時期、1946年と1947年、シカゴ大学カウンセリングセンターに所属していた、クライエント中心療法の創始者でもあるカールロジャースと仲間たちが、集中的グループ体験を実施したのが始まりとされています。それは、第2次世界大戦直後の復員軍人の問題を処理する有能なカウンセラーを短期間で養成するといった要請に応えるためのものでした。そこでは、カウンセラーの資質の一つとしての”自己理解”を深める体験として、それとカウンセリング場面で有効であろう態度しての共感的に傾聴する態度の養成に主眼があったのです。その後、ロジャースは、「集中的グループ体験は、おそらく、今世紀のもっともすばらしい社会的発明である」と述べ、グループを用いた人間関係トレーニングとして「ベーシック・エンカウンター・グループ(basic encounter group)」がアメリカ西海岸を中心に発展していったのです。そのグループ体験は、一人ひとりの人間の存在を尊重し、「いまここ」での関係に生きるとき、メンバー相互に驚くほどのエネルギーの集中が起こり、メンバー相互の理解や出会いが生まれ、その時個人やグループの変化成長が生起することを発見していったのです。

以上のことから、ベセルで始まったTグループなどの体験学習は、”グループ指向”、”体験から学ぶ教育指向”といわれ、一方エンカウンターグループは、”個人志向”、”治療的な関係指向”といわれるゆえんであることがご理解いただけると思います。ラボラトリー方式の体験学習は、グループ体験をすることから学ぶことが大切になります。一方、エンカウンターグループはグループの中で共感し合える体験ができることが大切になるといえるでしょうか。

しかしながら、今日では、お互いのアプローチが融合しあいながら、グループ体験を用いたさまざまな活動に広がりを見せており、両者の違いを論議することにはあまり意味を見いだすことができないと考えています。
目の前の学習者にとって、何が大切か、その視点からいろいろなアプローチができるといいでしょう。


カテゴリー